ステロイド薬が無効な喀痰過多などの喘息症状をひきおこす物質を発見

吸入ステロイド薬は多くの喘息症状に有効で喘息治療の第一選択薬として知られています。ところが、喘息の反応が長年続き、粘液を分泌する杯細胞が増えるなど、組織が変形した状態 (リモデリングといいます)になった患者ではステロイド薬はあまり有効でなく、喀痰過多などの症状が続きます。

現在、喘息の組織リモデリングで最も重要な働きを演じているのはマスト細胞であると考えられています。私たちはDNAチップを使っていろいろな細胞の約2万種類の遺伝子発現を調べ、(1)他の細胞にはほとんど存在しないマスト細胞特異的分子であり、(2)アレルギー炎症で増え、(3)ステロイドでその増加が抑えられない分子を探したところ、アンフィレギュリンを発見しました。

さらに、アンフィレギュリンの働きを調べたところ、気管支の杯細胞を増やすこと、喘息患者の肺マスト細胞に大量に存在し、その量は喀痰の多さと比例していることをつきとめました。 以上より、アンフィレギュリンはステロイド薬が効かない喀痰過多などの喘息症状をひきおこす真犯人であることがわかりました。アンフィレギュリンを標的とした喀痰抑制薬の開発が期待されます。

私たちの研究と平行して ほぼ同時に米国の研究者もマスト細胞から分泌されるアンフィレギュリンが喘息気管支のリモデリング (気道上皮基底膜繊維化)に関係していることをDNAチップを使って発見し、米国アレルギー学会雑誌に発表したため、2005年2月号においてハイライト(Editor's Choice)としてとりあげられています。なお、この 発見は理研横浜研究所免疫アレルギー科学総合研究センター(奥村繁研究生、岡山吉道研究員)、国立成育医療センター研究所(斎藤博久部長)、獨協大学呼吸器内科 (相良博典講師、福田健教授)との共同研究成果です。

Okumura S, Sagara H, Fukuda T, Saito H, Okayama Y. Fc epsilon RI-mediated amphiregulin production by human mast cells increases mucin gene expression in epithelial cells. J Allergy Clin Immunol. 2005 Feb;115(2):272-9.