実験動物の飼養及び保管等に関する基準
昭和55年3 月27日総理府告示第6号
第1 一般原則
管理者等は、実験動物の生理、生態、習性等を理解し、並びに愛情をもって飼養し 、及び科学上の利
用に供するように努めるとともに、責任をもってこれを保管し、実 験動物による人の生命、身体又は
財産に対する侵害及び人の生活環境の汚損を防止す るように努めること。
第2 定義
この基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 実験動物 実験等の利用に供するため、施設で飼養し、又は保管しているほ乳類及
び鳥類に属する動物(施設に導入するため輸送中のものを含む。)をいう。
(2) 実験等 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用
に供することをいう。
(3) 施設 実験動物の飼養若しくは保管又は実験等を行う施設をいう。
(4) 管理者等 管理者、実験動物管理者、実験実施者及び飼養者をいう。
(5) 管理者 実験動物及び施設を管理する者をいう。
(6) 実験動物管理者 管理者を補佐し、実験動物の管理を担当する者をいう。
(7) 実験実施者 実験等を行う者をいう。
(8) 飼養者 実験動物管理者又は実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する
者をいう。
第3 導入に当たっての配慮
1 管理者及び実験動物管理者は、施設の立地、整備状況及び飼養能力並びに実験実 施者が策定した実験
等の計画等を勘案の上定められた当該施設の事業計画に基づき、 実験動物を導入するように努めること。
2 実験動物の輸送に当たる者は、その輸送に当たっては、次の事項に留意し、実験動物の健康及び安全、
並びに実験動物による事故の防止に努めること。
(1) 実験動物の疲労及び苦痛をできるだけ小さくするため、なるべく短い時間によ る輸送方法を選
ぶこと。
(2) 輸送中の実験動物には、必要に応じて適切な飼料及び給与を行うこと。
(3) 実験動物の生理、生態、習性等を考慮の上、適切に区分して輸送する方法を採るとともに、輸送
に用いる車両、容器等は、実験動物の健康及び安全を確保し、並び に実験動物の脱出を防止するため
に必要な規模、構造等のものを選定すること。
(4) 実験動物の微生物、汚物等により環境が汚染されることを防止するために必要 な措置を講ずるこ
と。
3 実験動物管理者は、施設への実験動物の導入に当たっては、必要に応じて適切な検疫を行い、実験実施
者、飼養者及び他の実験動物の健康を損ねることのないように すること。
第4 実験動物の健康及び安全の保持
1 管理者は、実験動物に関する知識及び経験を有する者を実験動物管理者に充てる ようにするこ
と。
2 管理者は、実験動物の飼養及び保管については、その生理、生態、習性等に応じ て適切な設備を
設け るようにすること。
3 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、次の事項に留意し、実験動物の健康 及び安全の保持
に努めること。
(1) 実験動物の生理、生態、習性等に応じ、かつ、実験等の目的に支障を及ぼさな い範囲で、
適切に飼料及び水の給与を行うこと。
(2) 実験動物が実験等の目的に係る疾病以外の疾病にり患することを予防する等必要な健康管
理を行うこと。
第5 実験等の実施上の配慮及び終了後の処置
1 実験実施者は、実験等の目的を達成するために必要な範囲で実験動物を適切に利 用するように努
めること。
2 実験動物管理者又は実験実施者は、次の事項に留意し、実験等の実施及び実験等 の終了後の処置
に当たるように努めること。
(1) 実験等に当たっては、その実験等の目的に支障を及ぼさない範囲で麻酔薬等を 投与するこ
と等によりできる限り実験動物に苦痛を与えないようにするとともに、保 温等適切な処置を採
ること。
(2) 実験等を終了し、又は中断した実験動物を処分するときは、速やかに致死量以上の麻薬等
の投与、又は頸椎脱臼等によって、実験動物にできる限り苦痛を与えない ようにすること。
(3) 実験動物の死体については、適切な処置を講じ、人の健康及び生活環境を損な うことのな
いようにすること。
第6 危害防止
1 管理者等は、実験動物の飼養及び保管並びに実験等に関係のない者が実験動物に接することのな
いよう必要な措置を講ずること。
2 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、次により、相互に実験動物による危害防止に必要な
情報の提供を行うように努めること。
(1) 実験動物管理者は、実験実施者に対して実験動物の取扱い方法についての情報 を提供する
とともに、飼養者に対し、その飼養又は保管についての必要な指導を行う こと。
(2) 実験実施者は、実験動物管理者に対して実験等に利用している実験動物についての情報を
提供するとともに、飼養者に対し、その飼養又は保管について必要な指導 を行うこと。
(3) 飼養者は、実験動物管理者及び実験実施者に対して実験動物についての状況を報告するこ
と。
3 管理者は、実験動物からの疾病のり患を予防するため、実験動物管理者及び飼養者の健康につい
て必要な健康管理を行うこと。
4 管理者等は、実験動物が保管場所から脱出しないような必要な措置を講ずること。
5 管理者は、実験動物が脱出した場合の措置についてあらかじめ対策を講じ、事故の防止に努める
こと。
6 管理者は、地震、火災等の非常災害に対して採るべき緊急措置を定め、非常災害が発生したとき
は、速やかに実験動物を保護し、及び実験動物による事故の防止に努 めること。
第7 生活環境の保全
管理者等は、実験動物の汚物等の適切な処理を行い、及び施設を常に清潔にして微生物等による環境
の汚染、悪臭の発生等を防止し、並びに施設の整備等により騒音の 防止を図ることによって、生活環境の保
全に努めること。
第8 実験動物生産者の採るべき措置
実験等のためほ乳類及び鳥類に属する動物を生産する者は、次の事項に留意し、動物の生理、生態、
習性等を理解し、及び愛情をもって飼養するように努めるとともに 、責任をもってこれを保管すること。
(1) 動物の生理、生態、習性等に応じた適切な施設を設け、適切に飼料及び水の給 与を行い、
動物が疾病にり患することを予防する等必要な措置を講ずること。
(2) 生活環境の保全のため、動物の汚物等の適切な処理を行い、及び生産の場を常 に清潔にす
ることにより、環境の汚損の防止に努めるとともに、生産に従事する者の 動物からの疾病のり
患を予防する等必要な健康管理を行うように努めること。
第9 補則
管理者等は、ほ乳類及び鳥類に属する動物以外の動物の実験等を利用する場合においてもこの基準の
趣旨に沿って措置するように努めること。
第10 適用除外
1 この基準は、畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うこ
とを目的として飼養し、又は保管する実験動物の管理者等には適用し ない。
2 この基準は、生態の観察を行うことを目的として飼養し、又は保管する実験動物 の管理者等には
適用しない。ただし、当該実験動物に係る飼養及び保管に関する基準 については、展示動物等の飼養
及び保管に関する基準(昭和51年総理府告示第 7 号 )の第3(1を除く。)、第4(1の(3),(4)及び4を
除く。) 第6及び第7の2に定める事項を準用する。